積立NISAは、やったほうがいい。
多くの人がそう言いますし、国も制度として後押ししています。

それなのに、いざ始めてみると、
あるいは始めようとすると、なぜか不安になる。
「このまま続けて大丈夫なんだろうか」
「積立NISAって、貧乏な人がやるものなんじゃないか」
「周りはもっと上手にやっている気がする」
そんなモヤモヤを抱えている人は、実は少なくありません。

正解のはずの選択なのに、不安になる。
それって、自分が間違っているからなのでしょうか。

この記事では、その不安を「気のせい」や「考えすぎ」で片づけません。
なぜ積立NISAに、不安や劣等感がつきまといやすいのか。
そして、なぜ同じ制度でも、不安を感じる人と感じない人がいるのか。
その違いを、構造的に整理していきます。

ちなみに僕自身は、40代半ばで(旧)つみたてNISAを始めましたが、
正直に言うと、あまり不安は感じませんでした。
老後のこともそろそろ考えないといけないし、試しにやってみよう。
危なかったり、怪しいと感じたら、やめればいい。
月々5000円の少額投資なら、生活が苦しくなることもありません。

特別な知識があったわけでも、
投資に強いメンタルを持っていたわけでもありません。
ただ、あとから振り返ってみると、
「不安を感じにくい条件」が、たまたまそろっていただけでした。

もしあなたが今、
積立NISAに対して不安や居心地の悪さを感じているなら、
それは失敗のサインではありません。
むしろ、とても自然な反応です。

この先では、
なぜそんな感覚が生まれるのか、
そして不安を抱えたままでも、どう向き合えばいいのかを、
一つずつ整理していきます。

なぜ「積立NISAは正解のはずなのに不安」になるのか

積立NISAは、国が制度として用意している長期投資の仕組みです。
非課税というメリットもあり、「やったほうがいい」「早く始めたほうが得」と言われがちです。
それなのに、多くの人が不安を感じてしまうのは、少し不思議な話かもしれません。

でも実は、この不安にははっきりした理由があります。
それは気持ちの問題というより、置かれている状況や前提条件の問題です。

まず一つ目は、目的がはっきりしないまま始めていること
老後資金のためと言われても、現役世代にとって老後はどこか現実感の薄い話です。
ゴールが遠くてぼんやりしていると、「今やっていることが正しいのか」が分からなくなり、不安が出やすくなります。

積立NISAに限らず、
投資の不安を減らすには、
まず「何のためにやるのか」を自分なりに整理しておくことが大切です。
投資の目的をどう設定すればいいのかについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
第12回|投資の目的をどう設定するか?

二つ目は、積立額が生活に近すぎること
SNSや動画では「月3万円は最低」「1万円じゃ意味がない」といった情報が目につきます。
その結果、生活に余裕がない状態で無理をして積み立ててしまう。
そうすると、相場が少し下がっただけでも、「この選択は間違っていたのでは」と感じやすくなります。

三つ目は、他人と比べる環境にさらされすぎていること
今は、SNSを通じて他人の資産額や投資成果が簡単に目に入る時代です。
自分なりに考えて積立NISAをやっていても、
「もっと利益を出している人」や「短期間で資産を大きく増やしている人」を見るたびに、
自分だけ遅れているような感覚に陥ってしまいます。

こうして見ると、積立NISAへの不安は、
「自分の判断が間違っているから」生まれるものではありません。
目的が曖昧で、金額が無理をしていて、常に比較される環境にいる
この条件がそろえば、誰でも不安になります。

つまり、積立NISAに不安を感じるのは、とても自然なことなんです。

40代半ばで始めた僕が、不安を感じなかった理由

僕が(旧)つみたてNISAを始めたのは、40代半ばの頃でした。
きっかけは、銀行で何気なく勧められたことです。
「老後のことも考えたほうがいいですよ」
そう言われて、たしかにそうだなと思いました。

といっても、その時点で明確な計画があったわけではありません。
老後資金をいくら用意しなければならないのか、
いつまでにどれくらい積み立てればいいのか。
正直、そこまでは考えていませんでした。

それでも不安を感じなかったのは、
積立NISAを「人生を左右する大きな決断」だと思っていなかったからだと思います。

僕にとって積立NISAは、
「とりあえず試してみる選択肢」の一つでした。
危なそうだと感じたら、やめればいい。
合わなければ、別の方法を考えればいい。
そんな距離感で始めています。

もう一つ大きかったのは、積立額です。
月々5000円。
この金額なら、相場が下がって評価額が減っても、
生活が苦しくなることはありません。
損をしても、日常が揺らぐほどではない。
そう思える金額でした。

この「失っても生活に影響しない」という感覚は、
不安を感じにくくするうえで、とても重要だと思います。
投資の良し悪し以前に、
精神的な余裕が保たれるからです。

さらに言えば、当時の僕は、
他人の投資成果をほとんど目にしていませんでした。
SNSで資産額を眺めたり、
誰かの成功談を追いかけたりすることもなかった。
比べる相手がいなかった分、
自分の選択を疑うきっかけも少なかったのだと思います。

今になって振り返ると、
僕が不安を感じなかったのは、
性格が特別ポジティブだったからでも、
投資に向いていたからでもありません。

目的がシンプルで、金額が身の丈で、
比べる環境にいなかった。

ただそれだけの条件がそろっていただけでした。

不安になる人・ならない人の違いは「考え方」ではなく「順番」

前のセクションで書いたように、
僕が積立NISAで不安を感じなかったのは、
性格や考え方の問題ではありませんでした。

目的と金額、そして他人と比べない環境。
そうした条件が、たまたま先に整っていただけです。

では逆に、積立NISAで不安を感じやすい人は、
何が違うのでしょうか。

僕が思うに、その違いは
「考え方」ではなく、順番です。

積立NISAは、とてもよくできた制度ですが、
人生を一気に変える魔法の道具ではありません。

人によって目的はさまざまですが、
多くの場合、積立NISAは
将来に向けたお金の「土台」をつくる役割を担っています。

家で言えば、目立たないけれど欠かせない基礎部分。
基礎があるから、その上にいろいろ積み重ねられます。

ところが今は、その順番が逆になりがちです。
生活に余裕がない状態のまま、
「将来のためだから」と積立額を増やしてしまう。
すると、相場が少し動いただけで、
気持ちも一緒に大きく揺れてしまいます。

不安が強い人ほど、
まず見直したほうがいいのは、
「この金額を続けていて、今の生活は本当に大丈夫か」という点です。
積立NISAを続けるために、
日々の支出を我慢しすぎていないか。
評価額の増減に、一喜一憂しすぎていないか。

もし少しでも無理を感じているなら、
積立額を減らすのは“後退”ではありません。
順番を整え直す行為です。

月5000円や1万円でも、意味はあります。
金額の大小よりも、
「長く続けられるかどうか」のほうが、
結果には大きく影響します。

「少額だと意味がないのでは?」と不安になる人も多いですが、
実際には積立額と生活のバランスのほうがずっと重要です。
少額の積立NISAでも大丈夫なのか?については、こちらの記事で詳しく整理しています。
第11回|「NISA貧乏」にならないために――投資と生活のバランスを考える

もう一つ、順番として大切なのが、
何を基準に判断するかを先に決めておくことです。

今はSNSを見れば、
短期間で資産を増やした人や、
大きな利益を出している人の話がいくらでも流れてきます。

それを最初の基準にしてしまうと、
自分の選択は、どうしても不安に見えてしまいます。

だからまず見るべきなのは、
他人ではなく、自分の状況です。

比べるなら、
昨日の自分、去年の自分。
少しでも前に進んでいれば、それで十分です。

情報が多い時代だからこそ、
何を見て、何を見ないかを意識することも大切です。
氷河期世代が情報に振り回されずに判断するための考え方は、こちらの記事で整理しています。
氷河期世代が“情報に振り回されない”ための4つのルール

積立NISAは、
「やらなきゃいけないもの」ではありません。
「自分の人生に使ってもいい道具」の一つです。
順番を間違えなければ、
不安を抱えながらでも、ちゃんと味方になってくれます。

まとめ|積立NISAで不安になるのは、間違いではない

積立NISAに不安を感じるのは、
判断を誤っているからでも、
考え方が甘いからでもありません。

多くの場合、
目的や金額、そして判断の基準が、
自分の状況よりも先に来てしまっているだけです。

積立NISAは、人生を一気に変えるためのものではなく、
将来に向けた選択肢の一つ。
無理のない金額で、生活を守りながら続けることに、
きちんと意味があります。

もし今、積立NISAに対して不安を感じているなら、
一度立ち止まって、
「順番」を見直してみてください。
今の生活は大丈夫か。
この金額なら、気持ちに余裕を持って続けられるか。
判断の基準を、他人ではなく自分に置けているか。

積立NISAは、
不安を押し込めたまま、我慢して続けるものではありません。
自分の人生に合わせて、
使い方を調整していい道具です。

焦らず、比べすぎず、
続けられる形で向き合うこと。
それが、長い目で見て、
いちばん確実な選択だと思います。

次回予告

積立NISAについて調べていると、
「貧乏人がやるもの」「やっても金持ちにはなれない」
そんな言葉を目にすることがあります。

正解のはずの制度なのに、
なぜこんなイメージがついてしまったのか。

次回の記事では、
「積立NISA=貧乏人」と言われる理由を整理しながら、
本当に貧乏になってしまう人の共通点と、
そうならないための考え方を解説します。

不安の正体を、もう一段だけ深く掘り下げていきましょう。

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